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先輩の声(雇用)

牛がかわいい。それだけで、人生が動いた

北海道紋別市の冬の空気は、きりっとしていて、頬のあたりが少しだけ痛い。流氷も流れてゆくこのまちに存在する預託育成牧場「しらかば牧場」が本日の舞台です。

酪農の仕事と聞くと、「きつい」「汚い」「大変そう」。そんな先入観が、どうしても先に立ちます。でも、ここで働く若手ふたりの話を聞いていると、別の入り口が見えてきました。

きっかけは、驚くほど軽やかで。決断は、意外なほどまっすぐ。そして何より、ふたりの言葉の中心にいつもあったのは「牛がかわいい」という、単純で強い事実でした。

なぜここに来て、どう働き、これから何を目指していくのでしょうか。
前半は新潟から移住してきた平澤さん、後半は札幌から環境を変えた葛さん。それぞれの「今」を辿っていきます。

新潟から、北海道へ

新潟県出身の平澤さんは、2024年4月まで新潟で暮らし、それから北海道へやって来ました。今は牧場から車で15分ほどのところにある滝上町で一人暮らしをしています。

前職はレジ業務中心の接客業。そこから、まったく違う世界に飛び込むことになりますがその理由を尋ねると…

「とにかく動物が好きで。動物に関わる仕事がしたいな、って思ったときに酪農が浮かびました」

聞けば、北海道まで移住することへの抵抗はあまりなかったそうです。
「酪農っていったら北海道だなって。景色も良さそうだし、食べ物もおいしそうだし。ノリで来ました(笑)」と笑う平澤さんです。

こうして北海道の牧場の求人をいくつか見て、見学に応募したのはここしらかば牧場を含めて2軒だけ。

「業務内容を細かく比較したというより…ホームページの雰囲気とか写真の印象で、“ここ良さそう”って直感で2軒選びました」

さらにここの決め手になったのは、この場所が「育成牧場」だったこと。


「ちびちゃん(若い牛)中心だから、体力に自信がない私でもやりやすいかなって思ったのと…働く時間も、自分に合いそうだなって」とニコッと笑う平澤さん。

酪農=力仕事、というイメージに怯えつつも「自分がやれそうな形」をちゃんと探して選んでいる。その感覚は、これから応募を考える人にとっても大きなヒントになるはずです。

ギャップはない。でも、“意外”はあった

現在入社して1年7か月。完全未経験からのスタートで、事前の勉強もほぼしていませんでした。ネットで雰囲気を調べて、入社後に入門の本を少し読んだくらい。

実際に働き始めて大きなギャップは思いつかない…という様子でしたが、意外だったことはあるそうです。

「酪農って体力仕事、力仕事ってイメージが強かったんですけど…データを使ったり、頭を使ったりする作業もあるんだなって知りました」

“牛と向き合う”には、体力だけじゃなく観察力や判断も要る。そのリアルが、言葉の端々から伝わってきました。

また、平澤さんの言葉でいちばん印象に残ったのはここでした。

「大変なことがあっても、全部牛のためって思うとやる気が出ます」

忙しくても、可愛い牛の顔が目に入ると頑張れる。気持ちが沈んだとき、遠くの牛舎へ行って牛を眺めて、ふっと整えることもあるそうです。

牛は、仕事の対象である前に、心の支えでもある。その距離感が、平澤さんのまなざしから自然に伝わってきました。

仕事のオンとオフも重要です。休日は、たまにドライブ。冬は引きこもりがちになることもあるけれど、景色がきれいで見どころが多い北海道は、出かけるだけで気分が変わると平澤さんは言います。

車で約2時間ほどにある旭川にもよく行くのだそう。今住んでる場所に 便利さは少ないかもしれません。お気に入りのお店に行くのにも、時間がかかります。それでも、自然の大きさが日常にあることは、確かな豊かさです。

しらかば牧場初の人工授精師の資格を取りたい!

今後の目標は、知識を増やしてできる仕事を増やすこと。そして、後から入ってきた人を育てられる人になること。 その延長線上に、平澤さんが強く惹かれている分野があります。それが「人工授精」です。

「うち、受精師免許を持っている人がまだいないので…史上初になりたいです」

どれくらい勉強が必要で、試験がどういう仕組みで…まだ分からないことも多い。それでも、「今年度中(2026年度中)に取りたい」という言葉には、迷いよりも前向きさがありました。

「1年前より、動きが素早くなりました。次にやることを頭の中で整理しながら動けるようになってきたと思います」

未経験から始めて、仕事の解像度が上がり、次の目標が見えてくる。“成長の物語”は、こういう静かな実感の中にあるのだと感じました。

札幌のバーから、牛舎の朝へ

続いてお話を聞かせてくださった葛さんは「札幌生まれ札幌育ち」の29歳。去年まで札幌にいて、入社してちょうど1年ほど。社内ではいちばんの新人です、と笑って言いました。

前職は飲食。居酒屋ではなく、すすきののバーでした。

そんな葛さんの転機は、就農フェアへの参加。
親戚が米農家で、当初は酪農ではなく畑作を考えていたそうです。畑作のブースを探していたら、会場で声をかけられました。

「酪農は、興味ない?」

その言葉とともに連れていかれた先が、しらかば牧場のブースでした。

たまたまそこに着席してみると、そこでの説明が「おもろかった(笑)」と笑う葛さん。

仕事内容を語るより先に、こう言われたそうです。
「うち、牛が可愛いんだよね」「とにかく可愛いだけなんだよね」

見て見て、と言われて見せられたのは、かわいい牛の写真がずらり。

葛さんは何度も「おもろい会社だな」って思った、と話します。そして後日、自分から見学希望のメールを送っていました。

「札幌から離れたい」遠さが、背中を押した

畑作の選択肢が消えたのは、牛の可愛さに惹かれたから。でも、それだけではありませんでした。葛さんには、もうひとつ強い理由がありました。

「そもそも、札幌から離れたかったんですよね」

畑作で候補にしていた地域は、札幌からまだ近い。
「離れるなら中途半端じゃなくて、車でちょろっと行ける距離じゃなく、5時間くらいかかるような遠いところがいい」
極端に言えば、離島でもよかった。でも北海道からは出たくない。

そのバランスで、紋別の距離感が「ちょうどよかった」と言います。

「牛がかわいい以外だと?」と聞くと、葛さんは少し真面目な顔になります。

給料面がしっかりしていること。
ほかの牧場とも比べたうえで条件が良いと感じたこと。
そして、勤務時間が一般企業に近い形で“特殊すぎない”こと。

酪農というと、搾乳がある牧場では勤務時間が独特になりがちです。
でもここは育成牧場。働く時間が整いやすい。この「生活が回る」設計は、転職を考える人にとってかなり大きいはずです。

「きついはきつい」でもギャップはない

実際に見学に訪れ、社宅に2泊3日で泊まり、プチインターンのように実作業を体験しました。
エサやりなどを実際にやってみて、酪農の“きつさ”を体で知る。

そこでのギャップについても聞いてみました。

「めっちゃきついイメージはありました。ただ、思ってたよりきつかった…みたいなギャップはなかったです」

 むしろ印象的だったのは、入社前後の差より、この1年の変化でした。

「1年前のやり方と今のやり方、全然違うんですよ。餌も違うし、掃除のやり方も違う。ずっと進化してるから、固定がないというか…常に新鮮です」

ギャップがないのは、“変わらない”からではなく、“変わり続ける”から。この言葉は、しらかば牧場という職場の性格をよく表しています。

時間との勝負を回していく

牧場の朝は早いです。
葛さんはだいたい5時45分には会社に到着し、まずは専用のアプリを見て必要な情報をピックアップし、それから現場へ。

作業は餌やりから始まります。配合飼料をやり、もう食べられない食べ残しを掃除する。
牧草を配り、牛舎の掃除をして、預かっている他牧場の牛がいるため、毎週木曜日は「お迎え」に行く定例業務もあります。

午後も掃除と餌やりが中心で、合間に機械整備。畑の時期になると、牧草ロールづくりなどがイベント的に増えていきます。

16時半に終われるように動いていて、イレギュラーがなければ17時前には家に着けるというサイクルの中の生活です。

そんな中でのやりがいを聞くと、葛さんは即答でした。
「牛がかわいいんです(笑)」

でも、その“かわいい”は、眺めるだけの言葉ではありません。毎日見ているからこそ、成長が分かる。小さかった牛が、1年半で見違えるように大きくなる。

しらかば牧場では妊娠鑑定が大事な節目です。獣医さんに妊娠鑑定をしてもらい「プラスだよ」と言われた瞬間は、達成感がある。ただ、その牛は元の牧場に戻り、そこで出産し、搾乳へ入っていく。つまり、別れがあるのです。

「仲良くなった牛が旅立つの、寂しいですね。…この間も、“親友の牛”が旅立っちゃって」

冗談めかして「突撃しようかな、元の牧場に(笑)」と言いながら場を和ませる葛さん。可愛いからこそ、情が移る。情が移るからこそ、仕事が“作業”で終わらない。そのことを、葛さんの表情が教えてくれます。

なんでも揃うまちから、田舎まちへの移住

現在住んでいるお家は、家賃は2万円。水道・光熱費込みでも4万円以下。
「ぜひ滝上へ(笑)」と軽く言うあたりも、葛さんらしいです。

そして、葛さんにとって移住して良かったことは、生活リズムが整ったこと。前職は夜型で、今起きている時間に帰っているような生活でした。
「健康になりました。痩せました」と葛さん。

今後は免許取得(中型・大型)を目標にしていると話してくださいました。そして、畑作業のヘルプに行く可能性もあるとのことで、必要な操作や技術をしっかり身につけたい、とのこと。

将来的に担いたい役割を聞くと「面談で普通の社員ではなく、次のリーダーを目指して」と言われたことがあり、「行けるところまで行きたい」とその熱意を話してくださいました。

「酪農って、きつい・汚いって偏見で、候補から外れがちじゃないですか。別にそんなきつくも汚くもないし、誰でも気軽に転職先の候補に入れても全然大丈夫だよって言える職場にしたいです」

また、葛さんが強調したのは「会社としてやっている」こと。
家族経営・個人経営の牧場とはまた違うカタチがここにあります。 入り口が広くて、役割分担もできる。だから未経験でも飛び込みやすい。

この言葉は、これから来る誰かの不安を、少しだけ軽くしてくれるはずです。

「まず見学に来てほしい」ふたりの言葉が重なる場所

平澤さんは言いました。
「不安なこともたくさんあると思うけど、やってみれば何やかんやなる」

葛さんも、同じ方向を見ています。
「どう入り込めばいいか分からない職じゃなくて、気軽に候補に入れていい職だよ、って言えるようにしたい」

ふたりとも、最後に辿り着くのは同じ結論でした。
一度、見学に来てほしい。現場を見て、空気を吸って、牛を見て。そこで初めて分かることがあるから。

そして、きっとそのとき、思うのだと思います。
「牛、かわいいな」って。

その“かわいい”が、人生を動かすほどの力を持っていることを、ふたりはもう知っています。次にそれを知るのは、この記事を読んでいるあなたかもしれません。

会社名:株式会社しらかば牧場

住 所:〒099-5362 北海道紋別市上渚滑町奥東286